AI翻訳は翻訳者にとっての脅威となるか



こんにちは,ゴリです。今日はAI翻訳の脅威にさらされる私のお話です。

 

目次

 

どうせこうなるんだろ

僕が翻訳者になった頃の翻訳ソフトはまあ「お話にならない」レベルでした。下訳にさえ使えず,英訳なんて全然不慣れだったにもかかわらずこんなんだったら一から自分で訳した方が速いというレベル。

ですからAi翻訳についてもこう思っていました。

「どうせこうなるんだろ」と。

 

まわりふきん

 

何をどうすればこうなるのさ!

 

光陰矢の如し

Time flies like an arrow.

ところがどっこい,時は流れて令和2年の10月17日を迎えているわけですが,今このブログで活用させてもらっている Google翻訳のまあレベルが高いこと。

たとえば次の文を訳してもらいます。

「本治験は疾患Aの患者を対象として薬剤Bを皮下投与したときの安全性及び忍容性を検討する第II相ランダム化,二重盲検,プラセボ対照試験である」

すると,

「This is a phase II, randomized, double-blind, placebo-controlled clinical study to investigate the safety and tolerability of Drug B administered to patients with disease A.」(二次使用問題があるので,無理やり少し変えてあります)

細かいことを言えば,自分なら investigate じゃなく evaluate を使うなとかはあるもののほぼいいんじゃないでしょうか。Google翻訳は一般用であってメディカル専用でも何でもありませんし。

最初にこれが出てきたときは正直「オレ,終わった」と思いました。

メディカル系の翻訳者であればこれくらいはできるのでしょうが,でも逆にこれくらいなら"無料の"Google翻訳でできてしまうということです。

ところが,もう少し定型でない文を入れたときには「あれ?」ってなることもあります。

 

まだまだな点も

さて,翻訳を「原文の意図した意味をターゲット言語で表すこと」と定義してみます。

AIの仕組みはよくわからないのですが(「わからないで言ってのかよ」というツッコミがどこからともなく聞こえるような、聞こえないような^^)、AIは翻訳するときに「意味」も「意図」も”考えて”いないのではないかと思います。たとえば,Google翻訳に 「ちょっと考えてもらって構いませんよ」という意味の英文 You can sleep on it を入れると「それで寝ることができます」的な訳が返ってきてしまいます。

確かに「それで眠ることができる」という文脈もあるでしょう(車中泊用のマットの宣伝とかね)。でも You dont' have to decide now(今決めることないよ)と前に入れてもGoogle翻訳さんは相変わらず「マットの宣伝」として訳してきます。

 

じゃあ、安心かというと....

 

それじゃあ,翻訳者は大丈夫じゃないの?

 

それが短絡的にそうとも言えないと思っています。そもそも You can sleep on it などダブルミーニングな文は実務翻訳という分野ではあまり用いられないでしょうし,AIの進歩は人間の及ぶところではないと思うからです。

 

AIの成長速度をみくびるなってことだね。

そうだね。

 

もし今僕が若者で仕事として翻訳者を選ぶかと問われたら答えはノーかなと。20年前と今の比較から線形で考えてさえ20年後のAI翻訳はもう並の翻訳者では太刀打ちできないレベルになっていると想定できるので。

 

ただし,ここは強調しておかなければなりませんが,これはあくまで個人の感想です。

宣伝なんかで下の方にちっちゃく出てる「個人の感想です」を割と堂々と出してきたよ!

 

結局のところ...

僕が「絶対こんなの流行らないよ」って言っていた「携帯メール」は爆発的に広まりましたし。そもそもついこの間までAI翻訳の実用化はまだまだ先だと思ってましたしね。

ネット上では「いやAI翻訳なんて翻訳者の代わりにはならないよ」と説得力を持って主張されている方もいらっしゃいます。そもそもコンピュータが「意図」を汲み取るようになるのかは甚だ疑問ではあります。そういう意味では翻訳者レベルの人がAI翻訳の後処理を担当するという状況は長く続くのではないかとも考えられます。

僕が翻訳を始める以前は翻訳はたまたま翻訳の部署に入った人とかバイリンガルの人の世界でした。それがパソコンとインターネットの時代になり,ズブの素人だった僕が翻訳を始められる世界になりました。そして今,そのコンピュータによって僕の翻訳者人生に終止符が打たれるかもしれないというラッキーともアンラッキーと言えないアンビバレントな状況を経験中という。面白きかな我が人生!

 

いろいろ言ってるけど結局,個人的には脅威を感じているんだね,ゴリさん怖がりだし。

うん。それは否定しようがない^^