第7-(1) 疑似関係代名詞 as + shall の用法 [実践英文解釈]



 

実践英文解釈!の7回目です。今回は2つの文がありますので2分割でお送りします。

そして第7-(1)のテーマは

1. 疑似関係代名詞 as

2. shall の用法

 の2つです。では張り切ってやっていきましょう!

 

目次

 

問題

下記(2)を訳してください(今回のお題は(2)の下線部のみです。できれば頭の中でなく紙などに実際に書いてみてください)。

*(1) がまだの方はこちらからお読みいただけます。

(1) Naturalists continually refer to external conditions, such as climate, food, etc., as the only possible cause of variation.

(2) In one limited sense, as we shall hereafter see, this may be true; but it is preposterous to attribute to mere external conditions, the structure, for instance, of the woodpecker, with its feet, tail, beak, and tongue, so admirably adapted to catch insects under the bark of trees.

(3) In the case of the mistletoe, which draws its nourishment from certain trees, which has seeds that must be transported by certain birds, and which has flowers with separate sexes absolutely requiring the agency of certain insects to bring pollen from one flower to the other, it is equally preposterous to account for the structure of this parasite, with its relations to several distinct organic beings, by the effects of external conditions, or of habit, or of the volition of the plant itself.

 

On the origin of species. Kindle 版. 

 

解答例

はじめに解答例をお示しします。次のセクション以降でどうしてこういう訳になるのかも含めて詳しく解説します。

 

 

In one limited sense, as we shall hereafter see, this may be true
→ 後述するがある限られた意味においてはこれは正しいかもしれない。

 

文の文法解析

さて、なぜ上の訳例になるのかを解き明かすために文型を確認しますが、その前にセミコロンについて。

セミコロンは前後の文が意味的に関係していることを示します。この文の場合は but が入って前後の文が相反する意味であることが明示されています。いずれにせよ2つの文から成り立っていますので別々に考えていきます。

 

ではセミコロン前の文の文型を確認します。

 

赤で囲った as we shall hereafter see の正体はとりあえず置いておくとして、 この部分だけをみると we が S(主語)、see が V(動詞)であるのは問題ないと思います。そしてこの文をやっかいなにしている as については後ほど詳しく説明します。

また as we shall hereafter see の前後のコンマ(、)に注目です。前後にコンマがあるときはその単語/句/節が挿入されていることを表すと考えてほぼ間違いありません。したがってこの文は In one limited sense, this may be true の間に挿入された挿入節だと解釈します。 

次に this may be true は this が S、be が V、true が C(補語)でSVCの文型です。このSVCの文型では S=Cとなるので this = true ということになります(ただし、この文では助動詞 may によって”可能性のレベル”に落とされています)。

 

*文の要素については第6回で書きましたがもう一度掲載しておきます。

 

 

文の要素(S、V、O、C)について(再掲)

文の要素(S、V、O、C)としては名詞、動詞、形容詞(またはこれらに相当する句・節)があり、SVOCそれぞれの要素になれる品詞も決まっていて次の通りとなっています。

S(主語):名詞(句・節を含む)
V(動詞):動詞
O(目的語):名詞(句・節を含む)
C(補語):名詞(句・節を含む)、形容詞(句を含む)

*名詞は動名詞も含みます。

 

今回のポイント

次に上の訳を導く上で重要となる次のポイントについてそれぞれ詳しくみていくことにしましょう。

1. 疑似関係代名詞 as

2. shall の用法

3. その他

 

1. 疑似関係代名詞 as

as we shall hereafter see の as は疑似関係代名詞です。

 

疑似関係代名詞って何?

 

ではその正体も含めて疑似関係代名詞 as について要点を整理しておきます。

 

疑似関係代名詞 as とは?1. 本当は接続詞なのに関係代名詞みたいな働きをする粋なやつ

2. 先行詞⇒ 主節の一部または全部(which の非制限用法と同じ)     

3. which  の非制限用法と異なる点は先行詞(主節)の前に置けること

4. 意味⇒  as の「~のように」の気持ちを残しつつの「~であるが

 

うん、わからん。

ですよね^^

 

a. 本当は接続詞なのに関係代名詞みたいな働きをする粋なやつ

もともと as は接続詞なのですが、”あたかも”関係代名詞のような働きをするので”疑似”関係代名詞と呼ばれます。

 

b. 先行詞⇒ 主節の一部または全部(which の非制限用法と同じ)  

As everyone knows, the Earth is revolving around the Sun.

この文において As every one knows は the Earth is revolving around the Sun という主節全体を先行詞としています。つまり「地球は太陽の周りを回っている」という文全体に「誰もが知っている」がかかっているということになります。

また、上の1番とも関係することですが、as が接続詞であれば knows の目的語として it(=that the Earth is revolving around the Sun)が必要です。このことからも as が接続詞ではなくやはり関係代名詞の役割を果たしていることがわかります。

疑似関係代名詞
As everyone knows, the Earth is revolving around the Sun.

接続詞
As everyone knows it, the Earth is revolving around the Sun.

 

c. which  の非制限用法と異なる点は先行詞(主節)の前に置けること

As everyone knows, the Earth is revolving around the Sun を which を使って書き換えると、

The Earth is revolving around the Sun, which everyone knows.

と which の非制限用法の場合には必ず主節の後ろに来ますが、as の場合には前に置くことができます

 

d. 意味⇒  as の「~のように」の気持ちを残しつつの「~であるが」

接続詞としての as の意味は「~のように」で、疑似関係代名詞もそのニュアンスを踏襲してはいますが、訳すときは「~であるが」と少し軽い感じで訳します(とはいえ「~のように」でも問題ありません)。

As everyone knows, the Earth is revolving around the Sun.
 ⇒ 誰でも知っていることであるが、地球は太陽の周りを回っている

 

 

さて、疑似関係代名詞 as の概要がつかめたところで今日の英文に戻ってみましょう。

as の導く節は「主節の一部または全部を先行詞とする」のでした。この文における主節は In one limited sense, this may be true ですが、あえてこの位置に挿入していることから one limited sense を修飾していると僕は考えます*(下にある黄色いメモ参照)。 

したがってこの部分の文型は SVO(Oは one limited sense)となり、訳はこうなります。

 

In one limited sense, as we shall hereafter see
 ⇒ 「以下で見るのだが、ある限られた意味では」
 ⇒「後述するがある限られた意味では」

 

ここでは「以下で見る」⇒「後述する」と we see とは離れた訳に発展させています。言うまでもなく On the origin of species は紙媒体で発表されたものですから、we shall hereafer see は”読者”に向けられたものということになります。読者にとって「あとから見る」=「読み進めると分かる」⇒「後に書いてある」ですから「後述する」という訳が成り立ちます(「以下で見る」でも十分なのですが、こういう訳し方もあるよということで)。

ちなみに紙媒体なので see という言葉が使われています。仮に何かの映像をこれから見るのであれば watch が使われるはずです。

 

 

*この部分の文法解釈について

このブログでは one limited sense を先行詞とすると考えましたが、In one limited sense, this may be true を先行詞とするという解釈もあり得ます。ただしその場合には、

As we shall hereafter see, this may be true in one limited sense 

とする方が収まりが良い気がして(個人の感想です^^)、ここまで格調高い文章を書くダーウィンさんならきっとそうしただろうと(謎の上から目線^^)。

などと結構悩んで one limited sense が先行詞ということで訳していますが、実は訳してみるとどちらの解釈でもあまり差が出ないんですよね。

 

2. shall の用法

as we shall hereafter see の shall は古い言い方で今では will が使われることの方が普通なので、shall を見かけることは少ないかもしれません。ただ”ここで会ったが百年目”、せっかくなので shall の使い方をみておきましょう。

 

”ここで会ったが百年目”が誤用というかもはや語呂の良さだけで使ってない?

御用だ、御用だ^^

 

shall の用法は大きく分けて次の4つ+α があります。

 

shall の用法1. 単純未来 

2. 話し手の意志     

3. 疑問文(提案/申し出)

4. 命令/禁止

α. (契約書などで)「するものとする」

 

a. 単純未来 

”単純未来”というあまり聞きなれない言葉が出てきましたが、要するに普通の未来時制のことです。今ではほぼ will が使われるため自分で英文を書くときに shall を使う必要は全くありませんが、出てきたら分かるようにだけしておくとよいでしょう。

そして何を隠そう、as we shall hereafter see の shall はこれです。ですから訳は単純に、

as we shall hereafter see ⇒ この後見るように(後述するように)

となるわけです。

 

b. 話し手の意志     

次の2つの文をご覧ください。

I shall never forgive you.

I will never forgive you. 
どちらも「決してお前を許さない」という意味です。この場合 will と大差ありません。
 

じゃあ、一件落着っていうことで。

ところがどっこい。そうは問屋が卸さないんだよね。

 

実は意味に大差がないのは主語が I か we、つまり一人称のとき二人称三人称では意味が大きく異なります。

You shall have this book.

He shall call you back.

 

上の You shall have this book は「(私は)あなたにこの本を持たせる」という話し手の意志を表します。これを普通の日本語にすると「あなたにこの本をあげる」と言っていることになります。

下の He shall call you も話し手の意志ですから「(私は)彼があなたに折り返し電話をかけるようにする」⇒「折り返し彼に電話させる」という意味になります。

 

こういう言い方はあまり聞いたり読んだりした記憶があまりないんだけど?

 

それもそのはず、こういう言い方は今ではあまりせず、

You shall have this book ⇒ I'll give you this book.

He shall call you ⇒ I'll have him call you.


というのが普通です。

 

3. 疑問文(提案/申し出)

疑問文というのは具体的には、

Shall we ...... ?

Shall I ....... ?
のことです。

Shall we take a break?
(休憩しようか)

Shall I open the window?
(窓を開けましょうか?)

Shall we, Shall I ともに”相手の意志をたずねる”ものですが、

 

Shall we は「(私とあなたで)~しようか」という提案を、

Shall I は「(私が)~しようか」という申し出を、

 

それぞれ表します。

 

4. 命令/禁止

shall が命令、shall not が禁止です。

You shall stay here.
(ここにいなさい)

You shall not lie.
(嘘をついてはならない)

 

あれ、should?

 

確かに shall ⇒ should の変換をしても意味は同じ。それもそのはず、shall の過去形がshould なんです。そしてこの用法ではほぼ should が使われ shall を見かけることはほぼないと思います。

 

α. (契約書などで)「するものとする」

結局、現代英語では shall はあまり使われないのですが、実は shall がよく出てくる文書もあるのです。それは契約書。

Both parties shall discuss in good faith ......
(両当事者は誠意をもって協議するものとし.....)

契約書において shall は「義務」を表します(契約書の翻訳は専門外なのですが)。

 

この知識、必要な人ってめちゃくちゃ限られるよね?

かゆいところに手が届くのは当たり前、かゆくないところにも手が届くのがこのブログを良いところ(ど~ん!!!)

 

3. その他

In one limited sense, as we shall hereafter see, this may be true 

のその他の箇所について見ておきましょう。

 

this may be true は SVC なので通常 S=C ですが may によって「かもしれない」が付加されています。よって「これは正しいかもしれない」となります。

 

次に単語をさらっとおさらい。

one: 「ある」(特定しない1つのものを指す)

limited: 「限られた」

sense: 「意味」(e.g. in the sense of fairness =公平性という意味で)

hereafter: 「以下に」(here + after ⇒こことその後)

 

hereafter は堅い文で使われる単語で、hereafter を使った hereafter referred to as A(以下、Aという)は契約書などのお堅い文書ではよく出てきます。

 

まとめ

さて、延々と疑似関係代名詞と shall にまつわる話が続いてしまいましたが、最後に本題に戻って訳してみます。

 

In one limited sense, as we shall hereafter see, this may be true 

 

ポイントは

1. as we shall hereafter see は one limited sense を修飾

2. as の意味は「~であるが」

3. この shall は単純未来

でした。

 

各部の訳は

In one limited sense ⇒「ある限られた意味において」

as we shall hereafter see ⇒「後述するが」

this may be true⇒「これは正しいかもしれない」

です。

 

あとはこれを組み合わせて完成です。

 

In one limited sense, as we shall hereafter see, this may be true 

⇒「後述するがある限られた意味においてはこれは正しいかもしれない」

 

あとがき

毎回記事を書いていて思うのですが、どの一文をとってみても受験などで「下線部を訳せ」という問題にできそうな本当にポイントが詰まった良い文章だなと感心しきりです。

 

 

最後まで読んでくれてありがとう!!また,遊びに来てね♡