今日はクジラの公式(構文)の謎解きをするよ。
見た目はシマウマ,頭脳もシマウマ,その名は迷探偵ゼブラくん。
自分で迷探偵っていっちゃったよ。
目次
クジラの公式とは?
A whale is no more a fish than a horse is.
これがクジラの公式と呼ばれている文です。一般的には,
「馬が魚でないのと同様にクジラは魚ではない」
と訳されています。
なぜこのような訳になるのでしょうか?
その疑問に答えるべくクジラの公式について順を追ってみていきましょう!
1. than a horse is で省略されているのは何?
than a horse is の後ろに何かが省略されているけどゼブラくん分かる?
えっと,than a horse is not a zebra かな。
うん,違う。
英語では1つの文に同じ単語が出てくるのを避けるために省略されることがあります。
(例:He is taller than she [is tall] の [is tall])
A whale is no more a fish than a horse is で省略されているとすれば...そう, a fish です。
A whale is no more a fish than a horse is (a fish).
次に a horse is a fish の意味は「馬は魚だ」です。
ちょっと待った!「馬は魚だ」って聞き捨てならんよ。
その通り!
「馬は魚」なんてことは正しくないことなんです。
これを覚えておいてください。
2. no more than
クジラの公式の中核をなす構造である no more ~ than ~ について、これのくっついたバージョンの no more than からみていきたいと思います。
no は強い否定を表します。
vs.
He is no ordinary man → 彼は平凡な人なんかじゃない (彼はすごい人だ)
そして not more than A では「A より多くない → A 以下」と not が「more than(上回っていること)」を反転するのに対し、no more than A では「A よりほんの僅かも多くない → A と同じ」と no は「more than(上回っていること)」の反転ではなく1ミリも上回っていないと more を強く否定します。
さらに、no more than A という表現ではわざと A に大したことがない数字を持ってきて「大したことない A と同じ → たったAしか」という意味として使われます。
(たった百円しか持っていない)
not more than の「比較の反転」に対し、
no more than は結局同等を表すので「比較自体の否定」と言ってもよいかもしれません。
3. no more than のクジラの公式への応用
no more ~ than になっても no more than の特徴は維持していますので A whale is no more a fish than a horse is (a fish)に応用できます。
○ A whale is no more a fish than ~= クジラが魚であることは than 以下を1ミリも上回らない(=クジラが魚であることは than 以下と同じ)・・・①
○ a horse is (a fish) = 馬は魚である・・・②
①②より,
「クジラが魚であることは馬が魚であることを1ミリも上回らない(馬が魚であることと同じ)」・・・③
ここで、
☆「馬は魚」は正しくない
☆ no more than A の A はわざと大したことない数字を使う
を思い出してください。
クジラの公式では A の「大したことない数字」の代わりに「馬は魚」という”間違い”が入っている形です。
そこで改めて③を見ると、
「クジラが魚であることは馬が魚であることを1ミリも上回らない(馬が魚であることと同じ)」
=「クジラが魚というのは馬が魚というのと同じだよ」
と解釈できます。
実はこれがクジラの公式の意味です。
最初の方に書いてある一般的な訳と違うんだけど?
4. 定番訳の謎を解く
定番訳「馬が魚でないのと同様にクジラは魚ではない」で問題になるのが「ない」の部分です。
先ほどの「クジラが魚であることは馬が魚であることを1ミリも上回らない(馬が魚であることと同じ)」には「ない」なんて入っていません。
実はこれは単に「訳」の問題です。
「馬は魚」なんてことは正しくないのでした。「クジラは魚」という命題はその正しくない命題を1ミリも上回らないのでその正しくない程度において「クジラは魚=馬は魚」という命題は成立します。
これを日本語で表現すると「馬は魚」は間違いですので「馬が魚でない」となりそれと同じである「クジラは魚」も否定され「クジラは魚ではない」となって、最終的に定番訳「馬が魚でないのと同様にクジラは魚ではない」となるだけの話だったのです。
5. A is no more B than C is (D)
一般化して考えてみましょう。
A is no more B than C is (D)
(CがBでないようにAはBではない)
ポイントは、
1. A は一見 Bに見える
2. D が省略されているとき: 省略されたD=Bで C は誰がどう考えても B ではないもの
3. D が省略されていないとき: C is D は明らかに間違っていること(B≠Dの場合あり)
ということ。
(ネズミが鳥でないようにコウモリは鳥ではない)
2. A house without love is no more a home than a body without a soul is a man
(魂なき肉体が人でないのと同様に愛なき家は家庭ではない)
これらの例文で上のポイントをみてみます。
1. Aは一見Bに見える
例文1:コウモリは一見鳥に見えます。
例文2:ハウスは一見ホームに見えます。
A home is where your heart is という言い回しがあります。一方、
A house is just a building です。
そのニュアンスを「家」と「家庭」という言葉で表現しています。
2. D が省略されているとき: 省略されたD=Bで C は誰がどう考えても B ではないもの
例文1で D=B ですから「a rat is (a bird)」となり誰がどう考えても間違いです。
3. D が省略されていないとき: C is D は明らかに間違っていること(B≠Dの場合あり)
例文2では Dが省略されていません。「魂のない肉体が人である」という命題が間違っていると言い切れるかというと宗教にもよるかもしれませんが、ここはそういうことにしておきましょう^^
6. まとめ
今回は「クジラの公式」について詳しく考えてみました。
結局これをわかりにくくしていたのは「日本語訳」でしたね。
「A is no more B than C is (D) において no more は C is (D) の部分にはかかないが、この部分に絶対に間違いであるものが来るためそれとせいぜい同等であるA is Bという命題もまた間違いである」というなんともややこしい論理で日本語訳に「~でないのと同様」と後半も否定のようになるのでした。
こんなややこしい構文使わないだろう、と思っていたのですが、誰か有名人のインタビューで使っているのを聞いたことがありますので覚えて使いこなしちゃいましょう!
あとがき
いかがだったでしょうか?クジラの公式(構文)の謎は解けたでしょうか?
結構軽い気持ちで書き出したのですが「知っているけど理解していない」状態でめちゃくちゃ時間がかかってしまいました。が,とても勉強になったので結果オーライということで。
最後まで読んでくれてありがとう!!また,遊びに来てね♡