翻訳こぼれ話:無い袖を振るしかないこともある



今回は多分シリーズ化しない(しないんかい!)「翻訳こぼれ話」。
テーマは「ない袖を振るしかないこともある」でお送りします!

 

テーブルの上のリンゴがあります

「テーブルの上にリンゴがあります。」

実はこれ英語に訳せません。

 

うそ...だろ? 英訳メインの翻訳者だって言ってたのは何だったんだ?

 

案の定、ツッコまれてしまいましたが、「訳せません」の意味は「1:1対応した英語に」ということ。

 

「テーブルの上にリンゴがあります」はいくつかの英語に訳せてしまいます。

1. There is an apple on the table.

2. There are apples on the table.

3. There is an apple on a table.

4. There are apples on a table.

5. There are apples on tables.

 

逆にこの英語を日本語にするとどれも「テーブルの上にリンゴがあります」としてもOKじゃないでしょうか。

もちろん日本語でも「1つあるテーブルの上にリンゴが1つある」や「複数あるテーブルの1つに複数のリンゴがある」などといえなくはないですが、単に状況を描写するというより何かを説明しているかのような響きがあります。

 

 

日本語と英語の情報量が違う場合について

 

無い袖を振れ

翻訳案件でよくあるのが「過去の臨床試験から薬剤Aの有効性が確認されている」のような文。

この文には「単数か複数か」という情報はありません。前後の文脈でもわからないときは「無い袖を振る」しかありません。

Past clinical studies demonstrated the efficacy of Drug A.

 

ふむふむ、それでこの話のポイントは?

 

つまり、日本語と英語でそもそも文が持っている情報量が違う場合があるため、一見同じに思える原文/訳文のペアでも全く同じとはいえない場合があると。

 

もしかして、だから少々間違ってても気にしない気にしない、とかいう言い訳を言おうとしてるんじゃ?!

それもちょっとある^^

 

それもちょっとあるのですが、結局はいつもの「英語は英語で考えよう」という結論が言いたくて。英語は英語で考えれば英語と日本語の情報量の違いなんか関係ありませんし。

もちろん学習中は日本語で覚えた方が早い場合もありますが、英語を使うための練習では「訳さない」が基本になるんじゃないかなと。

 

あとがき

「翻訳こぼれ話」をシリーズ化すると翻訳の話ではなくてやれ目が痛いだの腰が痛いだの納期がきついだのという愚痴ばかりになりそうなので^^

最後まで読んでくれてありがとう!!また,遊びに来てね♡